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ベトナム「中国傾斜」に要注意

強権政治と「地域覇権」の野望

2024年10月号

 7月に死去したベトナムのグエン・フー・チョン共産党書記長の後継となったトー・ラム新書記長は短期間に権力基盤を固め、社会主義の原点回帰と中国接近を着実に進めようとしている。今や東南アジア随一の有望国として日本はじめ外資の直接投資を吸引するが、経済の現状は段々と中国に似始めた。腐敗・汚職と不動産バブルにまみれた中国と同じ轍にはまりつつある。その軌道修正を図るのがラム政権であり、強権的な中国の習近平体制と同じ性格を持つことを見落とすべきではない。最近の中越蜜月関係は日米欧韓国などにとって危険を知らせるアラートといっていい。
 ラム書記長のキャリアの特徴は公安畑で、役人や政治家、企業家などの情報収集と摘発に才能を発揮し、実績をあげてきたことにある。故チョン前書記長が進めた「反腐敗闘争」を公安相として十年間支えてきた。やや分野は違うが、人の弱みを握ることに強みを発揮する点では、旧ソ連のKGB出身のプーチン大統領に似ており、これからの政権運営でその本質が発揮されてくるだろう。
 習政権の「反腐敗闘争」が不正撲滅、腐敗体質の刷新による経済の健全化にあったことも確かだ。一方で政敵・・・