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社会・文化

改めて「川島雄三」が面白い

古びない「佯狂の映画人」の足跡

2024年9月号

 「人工流産の指導援助、堕胎罪の撤廃等を実施してはどうか、そこまで積極的に考えねば、今日の人口問題は決して解決しない、私は左様に確信しております」
 昭和30(1955)年公開の日活映画『愛のお荷物』―。その前半、権高な女性代議士が産児制限に消極的な厚生大臣に対し、こう迫る国会シーンがある。菅井きん演じる女性代議士は、戦前から産児制限を訴えてきた日本社会党の加藤シヅエを彷彿とさせる。その加藤らの運動によって昭和23年に制定されたのが「優生保護法」にほかならない。
 人工妊娠中絶を合法化する同法には、母体の保護をはじめ女性解放を目指す戦後民主主義の背景があった。が、同法の暗黒面である「優生思想」に関しては、当時の日本は無自覚だったと言うほかない。“命の優劣”は、むしろ進歩的判断と受け止められていたのだ。
 遺伝性疾患やハンセン病の発病者には、「不良な子孫」を排除する名目で不妊手術が施された。その件数は約25,000、多くは本人の同意がなかったという。同法制定から76年目の今年7月3日、最高裁大法廷は不妊手術の強制を憲法違反と判決、首相・・・