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政治

中身空っぽ「総裁選」

結局「派閥力学」で決まる茶番劇

2024年9月号

 疑似政権交代―。かつて昭和の自民党は政権が行き詰まると違う派閥や政策を持つ「新たな顔」にすげ替えることで危機を乗り切ってきた。岸政権での日米安全保障条約改定を巡る世論分裂を受け所得倍増を掲げた池田政権の誕生。金権政治の田中政権から「クリーン」を標榜する三木政権といった具合だ。令和の時代においても「振り子の論理」を求めて、岸田文雄首相が9月の自民党総裁選への不出馬を表明した。
 総裁再選に意欲を示しながらも現職総裁の出馬見送りは菅義偉前首相から二代続けての出来事。遡れば、菅だけでなく党内の求心力を失い出馬断念に追い込まれた河野洋平、谷垣禎一両元総裁も宏池会(現岸田派)に籍を置いた経験のある者ばかりだ。保守本流ながら「お公家集団」と揶揄される宿痾を感じさせる。
 岸田は不出馬表明記者会見の前日の8月13日夜、最側近の木原誠二幹事長代理や嶋田隆政務秘書官らとの都内ホテルでの打ち合わせで「追い込まれるような形で辞めたくない」と漏らした。中堅、若手の支援を受ける小林鷹之前経済安全保障担当相が16日にも立候補を表明するとの情報があったためだ。3年前の総裁選では、岸田が出馬を打・・・