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社会・文化

「電子カルテ」は恐ろしい

「拙速導入」が招く災いと大損

2024年9月号

 電子カルテはすべての診療情報を電子的データで一元管理するシステムだ。オンライン上のサーバで提供されているシステムやサービスを、インターネットを介して利用するクラウド型の導入を、厚生労働省が推進、巨大な市場が生まれている。政府や企業がデータを活用できるようにするのが狙いだ。だが開業医やクリニックが導入すると診療を麻痺させてしまう大きな「落とし穴」が潜む。患者も不利益を被る恐れがあるのだ。
 首都圏で複数のクリニックを経営する医療法人は複数の医療機関で1日に約1千人の外来患者を診療する。診療データを本部で一元管理することなどを目指し、クラウド型電子カルテ導入を決めた。理事長は、知人を介して、厚労省OBで電子カルテ業界に詳しいコンサルタントと契約し、メーカーや仕様の選択で助言を求めた。
 コンサルタントが推薦したのが、関西の中堅電子カルテメーカーが販売するクラウド型電子カルテと、他業界から進出した企業グループが販売する予約システムだ。「理事長の希望をすべて叶えるには、この組み合わせが最もいい」と説明した。
 クラウド型電子カルテは、メーカーが準備した共通システ・・・

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