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社会・文化

日本の科学アラカルト 169

エネルギー問題を解決するか 「ハイドレート」を巡る研究開発

2024年9月号

 ハイドレートとは、水和物のことであり、有機化学や無機化学の分野では水分子を含む物質の総称だ。ニュースに「メタン・ハイドレート(MH)」という言葉が度々登場する。「燃える氷」とも呼ばれ、見た目は氷と区別がつかない。水を冷却していくと氷になるが、ある条件下では、水分子が水素結合により立体(ケージ)を構成。ケージとはカゴのことであり、複数種類のケージが組み合わされることで固体になる。これを包接水和物(クラスレート・ハイドレート)とも呼び、カゴの中に、他の物質を抱え込むことができる。水分子の中に抱え込まれた物質のことを「ゲスト」とも呼び、これがメタンガスの場合がMHである。実際にはメタンだけでなく、窒素や二酸化炭素もゲストになる。
 MHは、周知の通り日本近海の海底に大量にある。古代の生物の死骸などから発生したメタンが、高圧の条件下でハイドレートになったものだ。「日本のガス消費量の百年分が眠っている」といった常套句で知られるが、一向に商用利用されない。当然、掘削のコストが見合わないからだ。石炭が廃れ、石油やガスがエネルギー源の主流になった理由のひとつは取り扱いのしやすさ。同じ化石燃・・・

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