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政治

誰もやれない「憲法改正」

「偽装改憲論者」ばかりの自民党

2024年9月号

 去る者、敗者、死者には、優しい。それが日本人の美徳だとしても、総理大臣・岸田文雄の自由民主党総裁選不出馬を美化する声が党内だけでなくメディアからも相次いでいるのは奇異に映る。身勝手な退陣は自民党の総選挙戦術としてはプラスでも、重要な政治課題に与える悪影響が過大だからだ。ようやく踏み出しかけていた憲法改正への第一歩が、号令をかけた岸田の退陣によって視界不良になったことも、その一つだ。
 岸田の不出馬表明を受け、「ポスト岸田」争いが乱戦模様になる中、名前の挙がった政治家に憲法改正を否定する意見はないが、優先順位の付け方、具体的な改憲項目はそれぞれ違う。問題は、どの候補の改憲論にも戦略と説得力のどちらか、あるいは両方が欠けている点にある。とりわけ、「刷新感」で注目される40代の二人の憲法観は、心もとない。

保守右派のウケ狙いだけ

 元環境大臣・小泉進次郎は「自民党再生に必要なのは、原点回帰だ。原点とは自主憲法の制定であり、憲法改正だ」と説く。断定的で力強い割には中身を伴わない論法は、いかにも小泉らしい。・・・

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