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極右版「ハプスブルク帝国」の勃興

「欧州の火薬庫」でロシアの謀略

2024年9月号

 ウクライナを歴史的な自国領とみなすロシアのウラジーミル・プーチン政権が仕掛ける帝国主義戦争がヨーロッパを過去に引き戻そうとしている。反EU(欧州連合)を掲げるナショナリズム政党の台頭により、中・東欧の危うさが増している。
 ウクライナ支援を巡ってEUをかき回すハンガリー首相オルバン・ヴィクトルが欧州議会で新会派「ヨーロッパの愛国者」を立ち上げた。フランスのマリーヌ・ルペン率いる国民連合をはじめ、イタリアやオランダなど各国の極右ポピュリズム政党が合流し、所属議員数で3番目に大きい勢力になった。
 6月末に発表された会派の立ち上げは、別の意味でも関心を集めた。ハンガリー与党フィデスを率いるオルバンとともに、オーストリアの極右政党・自由党の党首ハーバート・キックルとチェコ前首相アンドレイ・バビッシュがウィーンに顔をそろえ、会派設立を宣言した。これはオーストリア=ハンガリー帝国の中核だった地域と重なる。帝国の領地だったスロバキアやスロベニアのポピュリズム政党の参加が当初予想されていたこともあり、「ハプスブルク帝国の再来か」といった見方も一部で浮上した。
 会派会・・・

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