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連載

大往生考 第56話

支え合う独居高齢者たち
佐野 海那斗

2024年8月号

 独居高齢者の増加が止まらない。その現実を目の当たりにして、様々考えさせられた。
 
 患者は80代半ばの女性だ。40年ほど前に夫を亡くし、東京郊外の1軒家で1人暮らしをしている。子供は息子2人だったが、長男は既に心筋梗塞で亡くなっている。次男は京都の大学を卒業し、大阪の企業に就職した。
 
 私は次男の友人という関係で、患者の健康相談に乗ってきた。患者は7年前に食道がん、5年前に脊柱管狭窄症で手術を受けていた。最近は右膝の変形性膝関節症が悪化し、外出時にはシルバーカー(高齢者用手押し車)が欠かせない。
 5月の早朝、患者から電話があった。
「朝起きたら右目が開かない。ズキズキする」
 私は動眼神経麻痺や顔面神経麻痺などの神経疾患を疑った。前者は眼球を動かす4つの外眼筋に加え、眼瞼を開閉する上眼瞼挙筋が障害されるため、眼瞼下垂が生じる。この結果、目が開けられなくなる。内頸動脈や脳底動脈の脳動脈瘤が原因となることが多・・・