三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

《世界のキーパーソン》

セリーヌ・ベルトン(仏警察国内治安総局長官)

2024年8月号

 パリが暑い。五輪の熱戦展開中というだけでなく、気温も高いのだ。北緯48度と、日本の近くで言えばサハリン島のあたりだが、歴史的には8月の最高気温は25〜6度台。とても快適なはずなのに、今年は連日30度超えだ。五輪競技の参加者や取材陣からは、「なぜ施設に冷房がないの?」という恨みの声も聞かれる。
 猛暑の中、連日動員が続くのがフランスの各治安機関だ。その中でも国家警察(PN)は、全土で厳戒態勢をずっと敷いたままだ。「パリは、イタリアやコルシカのマフィア、アフリカ大陸のイスラム過激派など、世界中からテロや犯罪の組織が集まる場所だ」と、大手紙パリ特派員は言う。
 7月25日には、パリと主要都市を結ぶ鉄道で、フランス国鉄施設への破壊活動が連続して起こった。被害に遭ったのは計3件。過激な環境団体の犯行とされた。
街頭での警備とともに、テロ組織の内偵が重要な課題となる。フランスはスパイ機関が多い国だが、対外治安総局(DGSE)は海外諜報活動を、国内治安総局(DGSI)は国内諜報活動をそれぞれ担当する、というすみ分けがある。もっともどの国の諜報機関にもあるように、フラン・・・