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オリンピックはもう死んでいる

小笠原 博毅(神戸大学大学院教授)

2024年8月号

 ―パリ五輪が始まり、世間は盛り上がっていますがどう見ていますか。
 小笠原
  私は、五輪が盛り上がっているということ自体に懐疑的だ。2021年の東京五輪の際、直前イベントに足を運んだが、実際にはそれほど人は集まっておらず、メディアに作られたイメージが強い。そもそも、最近の五輪は、指針にすべき「オリンピック憲章」の理念すら見失い、実施すること自体が目的化した本末転倒のイベントになってしまった。アマチュアリズムの精神という方便すらもはや顧みられず、大会の存在意義は霞む一方だ。
 ―五輪開催を理由にした再開発について、お考えを聞かせてください。
 小笠原  
最近ではロンドンが顕著だったが、近年は開催都市が再開発の口実にオリンピックを使う。今回のパリは特に露骨で「グラン・パリ計画」ありきで地下鉄網を整備し、街を綺麗にしてしまおうという動きがあった。そこでは貧困層や移民は排除されてしまう。見た目は綺麗になったが、地価は上昇し郊外に押しやられる人も増えている。また、パリではセーヌ・・・

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