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経済

《地方金融の研究》のと共栄信用金庫

進まぬ震災復興で揺れる経営

2024年8月号

「まだ1~2合目辺り。ヤマ場はむしろこれから。とりわけ『天王山』となるのは和倉温泉の再建でしょう」。地元財界筋の1人はこう呟いて視線を俯かせる。
 湧く浦―つまり「湯の湧く入り江」にその名が由来するとされる和倉温泉は七尾湾の南岸沿いを中心におよそ20軒の旅館やホテルが立ち並ぶ。それが壊滅的とも言える被害を受けたのは今年1月1日。能登半島地震だ。
 石川県能登地方を襲ったマグニチュード7・6、最大震度7の揺れで温泉街の宿泊施設の大半が深手を負った。これまでに一般観光客の受け入れ再開にこぎつけられたのは、5月初旬に営業を再始動させた「花ごよみ」のみ。老舗「加賀屋」はじめ多くはなお「困惑と混沌」(関係者)の最中にいる。
 今回の地震では旅館群を波浪から防ぐ役割を担ってきた護岸も破壊された。旅館を再興するにしてもまずは護岸の復旧から始めることが必要なケースも少なくない。ただ国土交通省によると、護岸復旧工事はこの6月になってようやく土質調査が始まったばかり。地元筋は「とてつもない長期戦になる」と溜息をつく。
 その和倉温泉をお膝元としているのが、七尾市に本・・・