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経済

《企業研究》積水ハウス

完工マンション「解体」の病巣

2024年7月号

「『積木くずし』ならぬ『積水くずし』といったところか」。1983年にTBSが放送し高視聴率を博したテレビドラマ。それに準えてマンション業界OB関係者らの間ではこんなジョークも飛び交う。
 大和ハウス工業と並ぶ「住宅二強」の一角、積水ハウスが奇妙奇天烈で摩訶不思議ともいえる行動に打って出た。完成目前の分譲マンションの建設を突如打ち切り、6月4日、所管自治体に事業の廃止を届け出たのだ。この7月に引き渡しが予定されており、一部では顧客との購入契約も済ませていたとされるが、取り崩して「解体する」という。
 地価の上昇で土地の仕入れコストは膨らんでいる。建築資機材は高騰し、人手不足で労務費も増大。ホームビルダーの採算は厳しさを増している。計画段階や着工前ならペイしないから中止―は「当たり前の選択肢」(ゼネコン業界筋)だが、ほぼ完工した物件をわざわざ取り壊してまで撤退するのは「異例中の異例」と都内のマンション事業者。「首都圏でもこれまで聞いたことがない」と呆れ返る。
 対象となっている物件は東京・国立市で積水ハウスが建設を進めてきた「グランドメゾン国立富士見通り」。J・・・

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