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社会・文化

外科医「減少」をどう克服するか

国主導「海外派遣」という妙案

2024年7月号

 国境をまたいで東南アジアで活動する日本の外科系医師たちがいる。その活躍は注目に値する。ほかにも東南アジアで医療に従事したいという熟練した医師は多い。現在の活動は、いずれも無償の行為だが、政府が支援すれば、この道を選択する医師は増えるだろう。手術の経験を積むことができ、日本で問題となる外科医不足の対策となる。さらに医師というソフトパワーで国家間の信頼関係が醸成され、安全保障の観点からも力を発揮する可能性がある。
 注目される医師の筆頭が服部匡志氏だ。1993年に京都府立医科大学を卒業した眼科医で、2002年にベトナム人医師と知りあい、現地での眼科医療の問題を知った。それをきっかけに、日本とベトナムを往復して、診療にあたるようになった。ハノイの国立眼科病院を中心に、ベトナム各地で手術や診療を実施し、ベトナムでは普及していない高度な眼科手術を現地の医師に指導した。これまでに白内障手術4万件、網膜硝子体手術2万件をこなしている。
 服部医師の活動で特記すべきは、ベトナムで報酬を受け取っていないことだ。旅費、滞在費、さらに一部の治療費まで、日本に帰国した際にアルバイトをして・・・

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