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社会・文化

「激甚水害」とどう向き合うか

谷 誠(京都大学名誉教授)

2024年7月号

 ―近年、水害が激甚化している原因をどう考えていますか。
  日本は四方が海なので、海水温上昇の影響を大きく受ける。雨量が増大するのは当然だ。そのような環境変化が起きているのに、国土交通省はダムを造り堤防を高くして水害を防ぐ治水方針をそのままにして住民に協力を求めている。ダムや河川で受け止められる水の量、「流量」を増やして、氾濫を抑え込むという話だ。流量を上げることを金科玉条にした結果、手段は基本的にダムか堤防しかなくなる。しかし氾濫せず流せる流量を増やしても降水量がそれを上回れば洪水が起きる。
 ―森の専門家として山林の貯水能力をどう評価していますか。
  私は既存のダムがすべて無駄だとは考えていない。堤防も含めてこれまでに一定の役割を果たしてきたが、キャパシティには限りがある。さらにインフラの老朽化は待ったなしの状況。人口減少の中で今後どれだけ維持できるのかも不透明だ。であれば、山の保水力を維持するために、森をいか・・・

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