銀行界と証券界の業際問題は「百年戦争」とも呼ばれる。その象徴がファイアウォール（ＦＷ、業務隔壁）規制だ。
　六月に三菱ＵＦＪフィナンシャル・グループ（ＭＵＦＧ）がそのＦＷ規制を公然と無視したことが明るみに出た。証券取引等監視委員会が同グループの違反を発表すると、独立系証券会社は「誠に遺憾」と声を荒らげ、銀行業界は「あってはならないこと」と天を仰いだ。ＭＵＦＧ系列の証券会社を起債案件から外す動きも広がり始めた。
　三菱ＵＦＪ銀行、三菱ＵＦＪモルガン・スタンレー証券、モルガン・スタンレーＭＵＦＧ証券は、法人顧客の非公開情報をグループ内で悪用していた。6月24日には三菱ＵＦＪ銀ら三社に金融庁が金融商品取引法に基づく業務改善命令を出した。しかし、証取委が指摘した事実よりも実態はより悪質なのだ。

優越的地位の乱用は明白

　ＦＷ規制は近年、銀行業界の要望でジリジリと緩和されてきた。その最大の山場となったのが2020年。この年、銀行業界は政府への働きかけを活発化させた。金融庁は金融審議会・市場制度ワー・・・