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連載

金融の世紀

第19回【IMF・世銀の発足とスパイ疑惑】
黒木 亮

2024年7月号

 ブレトンウッズ会議の翌1945年12月27日、すなわち広島・長崎への原爆投下と終戦から4ヶ月あまりがたった日、米国ワシントンDCにある国務省の旧海軍省図書室に、カナダ、フランス、中国、インド、ギリシャなど、総勢29ヶ国の代表者たちが集まった。
 ブレトンウッズ協定を発効させるための調印式だった。式を主導したのは、モーゲンソーの後任の財務長官、フレッド・ヴィンソンで、テーブルの右隣に駐米英国大使、ハリファックス卿が着席した。
 協定発効の条件は、この年12月31日までに、出資総額の65パーセント(57億2千万ドル)を持つ国が批准し、各割当額の百分の一パーセントを当初事務経費として払い込むことだった。
 この日集まった29ヶ国の出資総額は、70億7950万ドルで、条件を十分クリアした。
 協定発効を受け、世界銀行は1946年6月25日に、IMFは1947年3月1日に、それぞれ業務を開始した。
 ブレトンウッズ会議で、合意形成の最大の障害となったソ連は、同国をつなぎ留めようとする米国の懸命の説得にもかかわらず、批准を見送り、関係各国を落胆さ・・・