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社会・文化

「天然ダイヤモンド」が失う輝き

需要減少と値崩れは止まらない

2024年7月号

 女性の憧れであり、婚約指輪で圧倒的なシェアを占める「宝石の中の宝石」天然ダイヤモンドの需要が減少、価格も急落している。同じ宝飾品で史上最高値を更新する金(ゴールド)との格差は鮮明だ。品質が向上し、天然と区別がつかなくなった人工ダイヤに市場を奪われたうえ、主要国で結婚件数が減少、男性が女性に贈る機会が減ったことも大きい。「ダイヤの支配者」とも呼ばれてきた英デビアス社の価格コントロールも顧客離れを招き、親会社であるアングロ・アメリカンがデビアスの売却方針を発表するまで状況は悪化した。ダイヤモンドは今、永遠の輝きを失いつつある。
 ダイヤモンド取引の指標となる研磨済みダイヤ(カラーF、透明度VS1)の価格は昨年末、一カラット9千ドル前後に下落、14年ぶりの安値をつけた。最大の市場である米国で、利上げによる高額消費の低迷と先行き不安がある。その直前、ダイヤ市況は一時、高騰していた。世界の天然ダイヤ生産の20%を占めるロシアがウクライナに軍事侵攻し、ロシア産ダイヤが事実上、輸入できなくなったためだ。供給懸念を受けて、2022年8月にダイヤ市況はピークをつけたが、需要減退はそれ以上に深・・・

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