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大河「メコン川」が枯れてゆく

中国の横暴に泣く流域諸国

2024年7月号

 東南アジアを代表する大河メコン川が近年、極端な水不足の危機に瀕している。
 中国のチベット高原を源流に、ミャンマー、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナムの計6カ国を流れる、4200キロメートルの国際河川は、流域住民2000万人の生活に欠かせない貴重な水源だった。
 ところが、中国のダム建設や流域住民たちの水利用の激増により、水位が危険なレベルにまで下がり、海水の逆流(遡上)が深刻化している。海水は以前より30~40キロメートルも上流にまで浸透するようになっている。流域各国は「重大な危機」と受け止め、国際協力を模索し始めた。

海水の遡上で塩害が多発

 カンボジア観光で「アンコール・ワット」遺跡群と並んで人気なのは、少し前までトンレサップ湖だった。「伸縮する湖」として知られ、雨季には乾季の3倍以上に、湖の面積が膨れ上がった。20世紀末には、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の「生物圏保存地域」に指定された。
 トンレサップ湖の豊かな水はトンレサップ川になって下り、首都プノンペンでメコン・・・

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