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日米豪印「クアッド」の 行き詰まり

中国との和解に傾くバイデン政権

2024年7月号

 日米豪印4カ国による、戦略・安全保障の枠組み「クアッド(QUAD)」が暗礁に乗り上げている。米国のジョー・バイデン大統領が、ロシアによるウクライナ侵攻とイスラエルのガザ戦争という二つの危機に直面して、インド太平洋地域に割くエネルギーを相対的に失っているからだ。
 中国の習近平政権は最近、米国のアジア外交について「恐るるに足らず」と見切ったかのように、アジアやインド亜大陸で、積極的な外交攻勢をかけている。21世紀の太平洋は、「中国の海」になっていくのだろうか。

「休戦」を求めたバイデン

 中国側がバイデン政権の変化を悟ったのは、昨秋のことだ。2023年10月14日の土曜日、アントニー・ブリンケン米国務長官から、王毅外相に「お話をしたい」と電話が入った。
 在米の西側外交筋は「この時の電話で、王毅外相は米側が中国と和解したがっていることをはっきり分かったはずだ」と言う。10月7日には、イスラム勢力「ハマス」が大規模攻撃をイスラエル側に仕掛けて、1,400人以上殺害という、過去に類例のない攻撃・・・

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