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社会・文化

地方自治体より国家の「消滅危機」

石井 吉春(北海道大学公共政策大学院客員教授)

2024年6月号

 ―人口戦略会議が発表した「消滅可能性自治体」に関する十年ぶりのレポートをどう見ていますか。
 石井 現在、日本が直面しているのは「自治体が消える」という瑣末な問題ではなく、日本そのものが消滅しかねない危機だ。レポートは小さなことにとらわれる日本らしい内容だと感じた。この国は、地方創生の失敗について総括せず、新型コロナ禍によって出生率が激減したことについても正しく状況把握ができていない。新型コロナによって、老人はたいして死んでおらず、年間出生数が20万人減った。これは赤ん坊を20万人殺したようなものだが、そうした捉え方をしていない。
 ―今回の地方創生失敗の原因はどこにありますか。
 石井 そもそも日本は地方の市町村を甘やかして手厚く支援してきた。しかしそれは自治体のモラルハザードを起こしただけで、具体的な対策にはならなかった。むしろ支援すればするほど人口が減るという矛盾した状態だった。地方創生も、最初は「頑張る自治体だけ・・・

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