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米中経済は 激戦の「新局面」へ

手段選ばぬ米国に苦悶の中国

2024年6月号

 ヒートアップする「バイデン対トランプ」の米国大統領選挙の大きな争点となっているのが対中経済制裁だ。バイデン大統領は中国製電気自動車(EV)に100%の関税上乗せを決めたが、トランプ前大統領はすぐさま200%を主張、中国バッシングの強さを競う構図になりつつある。中国側の対応は「報復より脱中国と中国隠し」(中国の研究者)。EV、スマホなどの中国メーカーが生産拠点を中国外に移し、迂回して米国に輸出する戦略だ。ベトナム、タイ、メキシコなどに中国企業が工場建設で殺到し、現地との合弁企業設立が相次いでいる。「中国隠し」も図っているが、そこには大きな落とし穴も待っている。
 バイデン政権は2018年春以降、数次にわたってトランプ前政権が課した中国製品への上乗せ関税を踏襲しているが、今回はEV、EV用バッテリー、太陽光発電パネル、レガシー(旧世代)半導体などへの“懲罰的追加課税”を断行した。米国だけでなく欧州、日本、インドなども問題視している中国の過剰生産・輸出問題も大きな動機だが、現実は「中国産業のこれ以上の成長と進化を止める」ことに狙いがある。
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