三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

中国軍「台湾包囲演習」の虚と実

着実に進む「侵攻」への準備

2024年6月号

 5月下旬に台湾を取り囲むように実施した中国軍の演習について、マスコミ各社は誕生したばかりの台湾の頼清徳政権を脅すだけの「抑制的な対応」だと相次ぎ伝えた。ところが、演習を通じて中国側が発信したメッセージや海警局との連携などを子細にみていくと、中国の不気味な戦略・戦術が浮き彫りになった。
 中国軍は演習を「聯合利剣(鋭い剣)2024A」と名付けた。聯合利剣は、中国軍が2023年4月にも実施した演習で、台湾包囲作戦を確認、能力の向上を目指すと位置付けられている。
 ただ、今回の演習は昨年の聯合利剣と同様、22年8月にナンシー・ペロシ米下院議長(当時)が台湾を訪問した後に実施されたものよりも抑えた内容になった。22年当時の演習は7日間にわたって続き、弾道ミサイルも計九発を発射。うち5発が日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下した。今回の演習では、中国・福建海事局は周辺を航行する船舶に対し航行禁止警報を出さなかった。台湾側も航空機や船舶の運航は通常通りに行われたと説明している。
 それでも、複数の専門家は「侮れない」と異口同音に語る。米国が繰り返し明らかにしている・・・