三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

社会・文化

農業の将来を潰す 「農協と族議員」

基本法「改悪」で絶望の食料安保

2024年6月号

 参議院で食料・農業・農村基本法の改正案が審議されている最中の5月9日午後、岸田文雄首相は東京・紀尾井町のホテルニューオータニで開かれた農業協同組合(JA)グループの機関紙の年次会合に出席し、笑顔をふりまいて記念写真の撮影に応じた。総選挙に備え、農村票を狙う思惑を隠そうともしない。農業政策は、JAの意向を反映する傾向を強め、消費者や農村の振興から遊離した「ばらまき農政」に先祖返りする。結果的に農業そのものも先細りするだろう。
 5月は各種業界団体の総会シーズンだ。首相に対する祝辞依頼は多いが、ほとんどはビデオメッセージか代読で対応する。日本農業新聞の全国大会に現役の首相が出席するのは初めてであり、破格の厚遇だ。岸田首相は祝辞の中で「生産現場の努力が報われる価格転嫁の仕組み作りなどを体系的に進め(中略)地域の成長、農業所得の向上につなげていく」と述べ、全国農業協同組合中央会(JA全中)が要望している価格転嫁と農家所得の向上を最優先課題に位置付けた上で「食と農の幅広い分野で、日々、頑張っている方々の所得向上に向けて取り組んでいく」と約束した。
 さらに、9日の大会の夕食・・・

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます