三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

タイ「タクシン一家」の復活劇

再び「同族支配」への黒い野望

2024年6月号

 タクシン派のタイ貢献党が政権を握ったタイで、いったんは権力の座を追われたタクシン元首相が息を吹き返している。セター首相による初の内閣改造ではタクシン氏に近い人物の閣僚入りが目立ち、元首相は政府の専権事項である外交でも存在感を見せ始めた。自身と同様に軍事クーデターで国を追われた妹のインラック元首相の帰国に向けた動きも着々と進み、将来の首相候補である次女のペートンタン氏の実績作りにも余念がない。一方、王室や国軍はタクシン氏への警戒を強めている。
 セター氏は4月下旬、初の内閣改造に踏み切った。副首相兼財務相にはインラック政権下で経済顧問を務めた前タイ証券取引所理事長のピチャイ氏が就任するなど「タクシン色が目立つ人事」だった。現地ジャーナリストは「改造人事のたたき台はセター氏が作ったとしても、タクシン氏の承認を取っているのは間違いない」とする。
 一方で、パレスチナ自治区ガザ地区でイスラム組織ハマスに拘束されたタイ人人質の解放やタイ・ミャンマー国境での紛争管理に尽力したパーンプリー前副首相兼外相は内閣改造で副首相ポストを外され、辞表をたたきつけた。これが少なからぬ混乱と・・・