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連載

をんな千一夜 第87話

ガントレット恒子 国際結婚第1号の「志」
石井 妙子

2024年6月号

 解散するの、しないのといった話が駆け巡る。不祥事が続くとイメージを一新したいというだけの理由で、突如、女性を選挙の顔に据えようと考える。国民にとっては迷惑な話だ。性別よりも、重視すべきは能力であろう。
 女性たちに参政権(選挙に立候補できるようになり、選挙で一票を投じられる権利)が与えられるのは戦後の1946年。GHQによる恩恵だった。
 参政権は男性でも大正14(1925)年までは、納税額の上位者にしか与えられていなかったが、その納税額による制限が撤廃され、収入に関係なく満25歳以上の男性全員に参政権が与えられた。その際、女性にも同様の権利をと婦人参政権運動が起こされたのだが、時期尚早として見送られた。この時、この婦人参政権運動を率先していたのが、ガントレット恒子である。彼女は肩を落とし、日本の未来を憂えた。
「女性が参政権を持たなくては、平和な社会は実現せず、戦争へと突き進んでしまう」
 そしてその憂いは、現実のものとなってしまう。
 婦人参政権運動と平和運動に生涯を捧げたガントレット恒子は、明治6(1873)年、愛知県に山田恒子・・・

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