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ウクライナに迫る「最悪シナリオ」

プーチンの「征服作戦」が始まる

2024年6月号

 ウクライナの苦境が深まっている。欧米の武器支援の遅れとウクライナ軍の兵力が消耗している間隙を突き、ロシア軍が攻勢に出ている。ウクライナ社会では厭戦気分が広がり始めており、ロシアは軍事面と並行して情報工作を仕掛け、ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー政権を内から瓦解させることも画策する。ウラジーミル・プーチン政権内ではヨーロッパを分断する構想まで浮上している。
「もうたくさんだ」。首都キーウ市内でタクシーに搭乗中、30代の運転手が戦況を伝えるラジオを切って、まくしたてた。いったい戦争はいつまで続くのか、将来の計画はまったくたたない、(兵役対象の18歳から60歳の)男性は出国もできない、いったいこの国のどこに自由があるのか、これで民主主義といえるのか、政府は我々の声を無視している、交渉で停戦すべきだ、戦争には行きたくない―。
 そしてこう言い切った。「ロシアに勝てるわけがない」。2020年2月24日にロシアのウクライナへの本格的な軍事侵略が始まって以来、市民の口から初めてそんな言葉を聞いた。
「(自由のために侵略者と戦うという)ロマンチックな期間は終わった・・・