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インド「暗殺大国」の実像

名ばかり「民主主義」を覆う闇

2024年6月号

 インドのナレンドラ・モディ首相が強権色を強めている。
 昨年以降、インド国内のイスラム教徒やシーク教徒の過激派に対して警察権力による弾圧が顕著になったのに加え、国外在住のイスラム過激派指導者などの暗殺にも、インド当局が関与した疑いが浮上している。
 米国のジョー・バイデン大統領はモディ首相に直接懸念を伝えたほか、カナダと英国はそれぞれ、「国内でインドの暗殺団が公然と不法活動をしている」として、モディ政権への疑念を募らせている。このところ自信過剰気味のインドは、いったいどこに向かうのか。

消される「インド政府の敵」

 パキスタン・パンジャブ州のラワルピンディーは、人口300万のにぎやかな商業都市だ。
 同州はインド側のパンジャブ州に接し、人的交流も多い。パキスタン軍や警察、治安機関にとっては、ふだんから最も警戒を要する大都市だ。
 昨年2月20日のことだ。イスラム過激派「ヒズブル・ムジャヒディン」の指導者、バシル・アフメド・ピアがこの大都市で白昼、オートバイに乗ったガン・・・