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プーチン側近 「派閥抗争」が過熱

「跡目」を巡る暗闘の行方

2024年6月号

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の五期目の任期始動に伴う内閣改造を含むクレムリン指導部人事は、ウクライナ侵略戦争の責任閣僚であるセルゲイ・ショイグ国防相の実質的更迭や、生粋の経済官僚アンドレイ・ベロウソフ氏の新国防相任命など、重大な変動を見せた。長期の戦争遂行と軍産複合体を国家経済に一体化させた体制作りを意味すると同時に、プーチン側近集団の二大派閥による水面下の権力闘争の過程を示すものだ。権力闘争は今後、プーチン後も見据えつつ激化へ向かう観測が強い。
 二大派閥の一方は、対米欧と国内統制ともに強硬路線を唱える情報機関・軍主体のタカ派で、同じ旧ソ連KGB出身のプーチン氏の盟友、ニコライ・パトルシェフ前安全保障会議書記が率いる。アレクサンドル・ボルトニコフ連邦保安局長官、セルゲイ・ナルイシキン対外情報局長官、ショイグ氏、報道統制係のアレクセイ・グロモフ大統領府第一副長官も一員だ。
 もう一派は、ホンネでは対米欧関係修復を志向するとされる経済重視のテクノクラートが主体。やはりプーチン氏のKGB時代の同僚で、軍民両工業部門を統括する国営企業「ロステック」総裁のセルゲイ・・・