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経済

再び巨額損失「農林中金」の大罪

この国の農業を滅ぼす愚行

2024年6月号

 農林中央金庫の巨額損失によって激震が広がっている。
 農林水産業の協同組合の金融事業を束ねる農林中金が、外国債券運用で2兆円を超える含み損を抱え、2025年3月期に5000億円以上の赤字に転落する。含み損解消には数年を要するとみられ、経営不安を回避するため傘下の農業協同組合(JA)などから追加出資を仰ぐという。失敗を農業者に転嫁する無責任さにJA関係者は怒りを露わにしている。5月22日に今回の損失と劣後ローンによる資本強化策などを発表した農林中金の奥和登理事長の記者会見を見た九州地方のJA幹部は憤る。
「あれが農家の大事なカネを“溶かした”うえに追銭をせびる会社のトップの態度か!」
 奥理事長は、濃紺のスーツにシルバーグレーの髪、金融エリート然とした外見で薄笑いを浮かべながら「想定外の金利上昇で2兆1923億円の含み損」「資本の健全性は失われていないが、7000億円の劣後ローンを(JAなどに)引き受けてもらう」と他人事のようによどみなく説明。会見冒頭で発した「責任を痛感している」という様子は微塵も窺えなかった。
 この日・・・