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WORLD

ギャングに乗っ取られたハイチ

まるで世紀末「暴力映画」の世界

2024年4月号

 交通量が多い三叉路に立つ一軒のガソリンスタンド。敷地内には、射殺されたとおぼしき男性少なくとも四人の遺体がカリブ海の強い日差しの下に放置され、傍らを住民が無表情で通り過ぎる。ハイチの首都ポルトープランスの街角を捉えた三月十八日のニュース映像は、ギャングの暴力に慣らされたハイチの「日常」をくっきり浮かび上がらせている。国連児童基金(ユニセフ)のラッセル事務局長は十七日に放送された米CBS放送の番組で、ハイチの現状を「まるで『マッドマックス』のシーンのようだ」と述べ、暴力に支配された世紀末の世界を描いた有名SF映画になぞらえた。
 ゾンビ映画で有名な民間信仰「ブードゥー教」発祥の地で、日本では女子プロテニス選手・大坂なおみの父親の出身地として知られる島国は、国土が北海道の約三分の一で人口は約一千二百万人。一八〇四年に「世界初の黒人による共和国」としてフランスから独立した。ただ、耀かしいはずの歴史は、巨大地震などの相次ぐ天災、独裁やクーデターなどの人災ですっかり色あせている。経済は二〇二二年まで四年連続マイナス成長で、一人当たりの国民総所得(GNI)は世界平均の一割強の一千六百十・・・