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社会・文化

能登被災地「棚田復旧」を阻む者

効率優先「農水審議委員」の酷薄

2024年3月号

 能登半島地震から間もない1月24日、壊れた棚田の復旧をめぐって農林水産省の審議会でちょっとした論争があった。過疎化や少子高齢化の段階を通り越して無人化に向かい始めている集落をどうするのか、消滅を容認するのか、不効率でも地域社会を維持するのか。主要メディアはまったく報じなかったが、国土形成の根本に関わる重要な課題を含んでいる。
 農水省の食料・農業・農村政策審議会は、毎年この時期に企画部会を立ち上げ、年次報告書である白書の作成に取りかかる。1年間の重大なできごとを数点選んで「トピックス」として紹介するのが恒例だ。当然、能登半島地震による農村の被害や、国連食糧農業機関(FAO)が選ぶ世界農業遺産の白米千枚田(輪島市)の被災にも話題が及んだ。
 同審議会委員の林いづみ・桜坂法律事務所弁護士が「産業としての競争性なり自立性を確保していこうという時に、復興の優先順位として棚田を再現(するの)は、首をかしげてしまう」という趣旨の発言をした。また、同委員の宮島香澄・日本テレビ報道局解説委員が「ある程度の限界になった所は、人には集住していただくしかない」という趣旨で同調した。{b・・・