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経済

中部電力「林社長続投」の全内幕

勝野=伊藤「技術系敗北」の衝撃

2024年3月号

 たじろぐほどの箝口令である。中部電力の社員は誰も〝その人〟に触れようとしない。固唾を呑んで事態の推移を見守るばかりだ。他の電力会社のある幹部は惻隠の情を禁じ得ず、つぶやいた。
「年明けは意気軒高だったのになあ……。今や毒舌も鳴りを潜め、すっかり憔悴しているらしい」
 一月十日、ホテルニューオータニ(東京・紀尾井町)で開かれた電力産業の賀詞交歓会―。一千人を超える出席者の中に、中電社長・林欣吾の姿はなかった。代わって手を携えるように現れたのは会長の勝野哲、そして副社長の伊藤久德である。
 元電力系統技術者の二人は師弟関係にあり、勝野の経歴を追って経営戦略本部長のポストにある伊藤は衆目が一致する次期社長。早ければ四月、遅くともその一年後には業務執行の頂点を極めると観測されていた。対照的に影が薄いのは社長の林だった。関西電力、さらに東邦ガスとのカルテル騒動が燻っており、販売畑出身の経営責任に照らせば、その在任は長くはないとみられていた。
 林が不在の賀詞交歓会で、電力関係者と快活に談笑する勝野、伊藤の姿は、今の中電の勢力相・・・