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WORLD

欧州を悩ます「親露国家」の広がり

震源ハンガリーの「トランプ願望」

2024年3月号

 ヨーロッパで「オルバン疲れ」という言葉が飛び交っている。ロシアのウクライナ侵略を巡って、ハンガリー首相ヴィクトル・オルバンは、欧州連合(EU)によるウクライナ支援をかき回した。孤立を深めて最終的にはEUの一連の合意を容認したものの、オルバンは「反ウクライナ」カードを捨ててはいない。ロシアと融和を図るポピュリズム勢力の再興を目論んでいる。
 オルバンは昨年12月、ウクライナの加盟交渉入りを巡るEUの合意にぎりぎりまで反対した挙げ句、採決を退席する前代未聞の行動を取った。総額五百億ユーロのウクライナ支援策には一度、拒否権を発動。さらに、スウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟にも最後まで慎重だった。ウクライナへの支援を遅らせ、西側の亀裂を印象付けたことで、ロシアにプラスに働いたことは間違いない。
 2月のEU首脳会議で拒否権のはく奪もちらつかされたオルバンは、ウクライナ支援策をしぶしぶ受け入れたあと、ヨーロッパはウクライナを支えきれないと改めて主張した。「ウクライナの最良の展望は(EUとNATOの外で)ロシアと西側の緩衝地帯になることだ」と言い切った。
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