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社会・文化

捏造捜査「外事警察」は解体せよ

大川原化工機「冤罪事件」の余波

2024年1月号

「捏造ですね」―。
 二〇二三年六月、東京地裁第712法廷で、警視庁外事一課の現職警部補は自らの組織が血眼になって仕上げた仕事を全否定した。摘発先だった機械メーカー、大川原化工機から総額約五億六千五百万円の支払いを求められた損害賠償請求訴訟。裁判で明らかになったのは、ずさん極まる捜査の実態だった。
「秘匿捜査」の名の下、分厚いヴェールの向こうで肥大する外事警察はかつて、日本の技術や軍事情報を狙うスパイと対峙するエリート集団とされた。ただ、経済安全保障の最前線に立つ組織の劣化と悪質性は深刻の度を増している。わが国は今後、大きな代償を払うことになる。
 ことの発端は二〇年三月だった。噴霧乾燥機のトップメーカー、大川原化工機の社長(七十)と役員(六十六)、顧問(七十一)=年齢はいずれも当時=が経済産業大臣の許可なく、軍事転用可能な噴霧乾燥機を中国に輸出したとして、警視庁外事一課に逮捕された。
 容疑を否認した三人は起訴後、保釈が許されなかった。顧問は二百四十日にわたる勾留中に胃がんが見つかり、起訴が取り消される前に死亡。社長ら二人の身体拘束も三百三十二・・・