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連載

本に遇う 第289話

軸のある人、ない人
河谷 史夫

2024年1月号

 古人は「本立ちて道生ず」と言った。根本が定まってはじめて進むべき道がはっきりするというのだ。根本とは思想とか信条とか人が生きて行く上で軸になるものだろう。軸なしでは始まらない。
 崩壊の危機に瀕した政府のおたおたぶりを見ていて、岸田文雄という人には軸がないということがつくづく分かった。長かったけれど何の成果もなく終わった安倍内閣が「後は野となれ山となれ」だったとすれば、物価高、旧統一教会、裏金疑惑と問題噴出のなか、まるで他人事のような岸田内閣は「カエルの面に小便」である。
 防衛増税を決めたら「増税メガネ」と揶揄され、慌てて所得減税を言い出せば「朝三暮四」と批判を招き、「適材適所」の政務三役三人は不適材と判明、「ない」はずだった自分と旧統一教会との接触まで明るみに出て、そこへ裏金摘発。政権からの安倍派一掃を図ったらしいが失敗。ふらふらしていて軸というものがない。
 踏んだり蹴ったり、泣きっ面に蜂、弱り目に祟り目。運が悪いと本人は嘆いたかも知れないが、運の問題ではあるまい。記者の質問に正面から答えない。説明責任はあると言いながら逃げる。自分の言葉がないので・・・