ソウル・竜山にある韓国大統領室。最近、高官たちは午後十一時くらいになると落ち着かない。スマホにいつ、あの電話がかかってくるのかと思うと、気が気でないからだ。電話をかけてくるのは尹錫悦大統領。案件は酒の誘いだ。そこから、午前二時、三時まで側近たちは大統領官邸で尹氏と一緒にウイスキーを痛飲する。元々、酒が大好きで三月の訪日時には酒豪で知られる岸田文雄首相を酔い潰させるところだった尹氏だが、最近は更に酒量が増えたという。酒はどちらかと言えば、からみ酒。「アーリーバード」で有名で、翌朝早く出勤しなければならない側近たちは、それでも辛抱強く尹氏の相手をして過ごすという。
　尹氏の酒量が増える第一の原因は最大野党「共に民主党」だ。定数三百の国会で、過半数の百六十八議席（十一月十八日現在）を握り、百十一議席の与党「国民の力」を圧倒する。当然、与党が目論む法案はなかなか国会を通過しない。やりたいことがやれない状態で、尹氏のストレスはたまる。
　支持率も好転しない。韓国世論調査会社リアルメーターが十一月二十日に発表した、十一月第三週の支持率は三五・六％で、不支持率は倍近い六一・八％・・・