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荒れる「コーカサス」の地政学

二つの戦争を左右する「要衝」に

2023年12月号

 パレスチナ自治区ガザ地区を支配するイスラム組織ハマスへの報復を続けるイスラエルを、陰で支えるイスラム国家がある。ロシアが裏庭と見なしてきた南コーカサスに位置するアゼルバイジャンだ。ウクライナと中東の二つの戦争の裏で、アジアとヨーロッパを結ぶ要衝コーカサスの地政学が荒れている。
 アゼルバイジャン軍が九月、アルメニアとの係争地であるナゴルノ・カラバフに「対テロ」の名目で進攻する直前、アゼルバイジャン空軍の輸送機が同国とイスラエル南部の軍事基地を何度も往復しているのが確認された。
 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によれば、アゼルバイジャンは二〇二〇年までの五年間で武器の七割をイスラエルから調達した。二〇二〇年に続く進攻で、アルメニア系住民が実効支配してきたナゴルノ・カラバフを制圧した背後には、イスラエルの武器支援があったことは確かだろう。
 イスラエルへの見返りは原油だ。アゼルバイジャンからジョージアを経由してトルコの地中海沿岸の積出港までつなぐ石油パイプラインを利用し、イスラエルは国内で消費する原油の約四割をアゼルバイジャンに頼る。同じルートで・・・