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連載

金融の世紀

第10回【モルガン家の系譜】
黒木 亮

2023年10月号

一八七三年に倒産したジェイ・クック商会にとって代わったのが、カルテルやトラストを通じて産業界を支配し、一大金融帝国を築いたJPモルガン(現JPモルガン・チェース)である。「ザ・バンク・オブ・バンクス(銀行のなかの銀行)」と自他ともに認め、二十一世紀の今日に至るまで、世界金融をリードしてきた。
 二〇〇五年には、サンフォード・ワイルの右腕を長年務めたジェームズ・ダイモンをCEOに迎え、直近の七年間(二〇一六~二二年)は連続増益決算である。昨年(二〇二二年)の純利益は三百七十七億ドル(約五兆二十八億円)で、二位のバンク・オブ・アメリカ(二百七十五億ドル)以下に大きく水をあけた。
 モルガン家は元々英国ウェールズの小地主農民で、新天地アメリカにやって来たのは一六二六年である。英国教会との宗教的対立を逃れ、信仰の自由を打ち立てようとした清教徒(プロテスタントの一派)たちを乗せたメイフラワー号がマサチューセッツ州の港町プリマスに到着してから六年後のことだ。
 同家の最初の移住者であるマイルズ・モルガンと二人の兄は、コネチカット州とヴァージニア州に定住した。マイルズは・・・