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経済

《地方金融の研究》西海みずき信用組合

驚きの預貸率「九割」の裏側

2023年9月号

 八九・一%―。「驚異的」とも言える数字だ。
 長崎県佐世保市に本店を置く西海みずき信用組合の今年三月末時点における預貸率だ。信組の顧客基盤といえば中小・零細企業や自営業者が大半だ。大口の貸出案件など「まず発生しない」(首都圏信組関係者)。そのうえ長年にわたって続く超低金利である。中には資金運用に困って有価証券投資に走る信組もある。
 コロナ禍での資金繰り需要の高まりでこのところじわり上昇傾向にあるとはいえ、実際、全国信用協同組合連合会(全信組連)などのまとめによると、国内百四十五信組の平均預貸率は五六%強。集めた預金の半分近くが「信用創造」ではなく、投資に回っていることになる。かくいう西海みずき信組も五年前の二〇一八年三月末の預貸率はわずか四九・三%に過ぎなかった。それをここ五年間、猛烈な勢いで小口貸出を積み上げることによって九割近くにまで高めたのである。
 なぜそんな芸当が可能になったのか。その秘訣が「徹底した業務の効率化による資金需要への即応体制の構築と『西海みずき』の知名度向上を狙ったブランド戦略」(地元財界関係者)だったとされている。旗振り役を担・・・