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経済

《クローズ・アップ》長﨑 桃子(東京電力EP社長)

「ピーチ姫」出世物語の筋書き

2023年8月号

 マリオが大魔王クッパの攻撃をかいくぐり、その先にいるピーチ姫を救う。名作ゲーム『スーパーマリオブラザーズ』の有名なラストシーンだが、電力業界でピーチ姫と聞いてこのゲームを思い出すのは少数派のようだ。東京電力ホールディングス(HD)の電力小売り会社、東京電力エナジーパートナー(EP)社長に抜擢された、長﨑桃子氏。それまで東電内では名前の桃を取ってピーチ姫と呼ばれていたが、ついにその通称も全国区になった。
 五十三歳の若さで、さらに女性。加齢臭が漂う電力会社のお歴々の中では、ひときわ目立つ存在である。EP社長はHD現社長の小早川智明氏の前職であるだけに、業界ではすわ「小早川社長の後釜で決定か」との観測が強まった。
 根拠はある。東電を管理下に置く経済産業省が、長﨑氏を社長に据えることで東電改革の総仕上げを演出しようとしているからだ。多様性が絶対視される昨今の風潮に合致するだけでなく、株を守りて兎を待つ東電が生まれ変わったことを印象付けられる―それがピーチ姫の価値である。
 経産省はポスト小早川のレールをせっせと敷く。電気料金値上げのタイミングでEP社長に就か・・・