クマ「出没多発」は野生の逆襲
人間と動物の力関係に異変
2023年7月号
各地でクマだよりが相次ぐ。季節を愛でる風流なものではなく、黒い獣が道路を横切ったり、学校や保育所の敷地に入り込んだり。北海道では釣り人がヒグマに襲われて亡くなる事態まで起きた。
悲惨な事故が起き、怖い思いをする人びとがいるのは間違いないが、それにしてもこれほど実態とかけ離れた「恐怖伝説」に彩られ、迷信や思い込みが語られている動物も少ないのではないか。
いわく、「人を襲ったクマは必ずまた人を襲う」「ナワバリを侵した人間は生きて帰れない」「出合ったら終わり」。
確かにクマは人身事故を起こす。だがそれは「襲う」「捕食する」ためだろうか。北海道庁の分析によると、死亡事故のうち七五%は急に出くわしてヒグマも人も興奮してしまったケースや、子グマを守ろうと母グマが過剰防衛を行った、いわば防御行動の結果であり、偶発的な事故だという。
残る攻撃型も、好奇心からの接近だったり、獲物として埋めたシカを守ろうとしたりなど、「血に飢えた獣が人を狙う」というイメージとはほど遠い。
人間社会の変化を敏感に察知{・・・
悲惨な事故が起き、怖い思いをする人びとがいるのは間違いないが、それにしてもこれほど実態とかけ離れた「恐怖伝説」に彩られ、迷信や思い込みが語られている動物も少ないのではないか。
いわく、「人を襲ったクマは必ずまた人を襲う」「ナワバリを侵した人間は生きて帰れない」「出合ったら終わり」。
確かにクマは人身事故を起こす。だがそれは「襲う」「捕食する」ためだろうか。北海道庁の分析によると、死亡事故のうち七五%は急に出くわしてヒグマも人も興奮してしまったケースや、子グマを守ろうと母グマが過剰防衛を行った、いわば防御行動の結果であり、偶発的な事故だという。
残る攻撃型も、好奇心からの接近だったり、獲物として埋めたシカを守ろうとしたりなど、「血に飢えた獣が人を狙う」というイメージとはほど遠い。
人間社会の変化を敏感に察知{・・・