世界一の金持ちと言えば、米国のＩＴ長者が定番だ。「フォーブス」の富豪ランキングで今年、番狂わせが起こった。テスラのイーロン・マスク、アマゾンのジェフ・ベゾスを抑えて、ベルナール・アルノーがトップに躍り出た。
　米国での反応は「誰だ、その人？」というのが圧倒的だったが、本誌読者はもう少しご存じだろう。フランスの高級ブランド「ルイ・ヴィトン」などを持つ「ＬＶＭＨ」のオーナーである。本欄で紹介するデルフィーヌ・アルノーは、ベルナールの娘だ。今年四月、四十八歳になった。
　アルノー家は、子供たちに極めてまれなスパルタ教育をした。幼い頃から、英仏両語を均等に学ばせ、どちらの言葉でも、アクセントのない完璧な発音を身に付けさせる。長じては、英国、米国とフランスの最高級のビジネス・スクールで学ばせる。
　ファッション業界の大舞台は、パリとニューヨーク、そしてロンドンである。どこにいても、口を開いたとたんに、尊敬を勝ち取れるように、完璧な英語または仏語を話すように育てる。これが、アルノー家の教育だった。
　デルフィーヌはフランス・リールのＥＤＨＥＣ経営大学院を卒・・・