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経済

米国「建設バブル」が鳴らす警鐘

「世界分断」悪化の象徴的現象

2023年7月号

 国内回帰(リショアリング)と対内直接投資(FDI)による米国製造業の求人件数が記録的になっている。反グローバリゼーションによる「世界分断」は産業の構造変化を生み、世界情勢の片隅で局地的バブルが起こっている。それを謳歌しているのが建設業界だ。
 コンサルティング大手カーニーのシニアパートナーであるバリカ・ソンタリア氏は話す。
「地政学的緊張、サイバーセキュリティの脅威、気候変動と関連する自然災害、電子商取引の成長の減速、世界的な景気後退などに備えた計画をはじめることは、すべての業界関係者にとって非常に重要だ」
 同社が六月発表した「グレート・リセット」と題されたサプライチェーンマネジメント専門家協会向けの二〇二三年物流現状報告書によれば、米国企業の物流コストは二二年に前年比一九・六%増、前々年比で四六%増と跳ね上がった。
 パンデミックによる物流混乱、特に中国のゼロコロナ政策で実害を被った荷主である米国の経営者たちはコスト増、納期遅れ、不確実性から自社を守るために必死だ。リショアリングをもはや「可能性」ではなく、現実として捉えており、大きなうねり・・・