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連載

本に遇う 第282話

NHK女性アナ哀話
河谷 史夫

2023年6月号

 朝はBS放送で朝の連ドラを見る。旧作と新作と続けて見るのである。再放送の今は「あまちゃん」だが、春までは「本日も晴天なり」だった。一九八一年秋から翌春の初放送は見逃していた。敗戦近い四四年の秋にNHK、当時は日本放送協会のアナウンサー、は敵性語ゆえ当時は放送員の第十六期生として採用された約三十人のほとんどが女性だったということを、それで初めて知った。
 男が戦場へ駆り出されて不足した要員を補うための措置で、原日出子演ずる元子さんは合格して勇躍、内幸町にあった日本放送協会に出勤する。仕事ぶりは男に勝るとも劣らない。生き甲斐があり、空襲下の宿直もやり、自信もついた。なのに戦争に負けてぞろぞろ復員してきた男どもに邪魔者扱いされる。元子さんたちは憤慨して辞めてしまうのである。
 彼女たちが続けていれば、女性アナは増えていったと思われる。だが七一年入局の山根基世の同期は三十人、うち女性は二人だけだったと、朝日新聞の「人生の贈りもの」という来し方を振り返る連載のインタビューに答えている。戦後四半世紀を経ても女性アナはまだその程度だった。山根は男社会をかき分けるようにして働き、・・・

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