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社会・文化

外科医がどんどん減っていく

「神の手」名医は絶滅の危機

2023年5月号

 外科医を志望する若手医師が減っている。日本外科学会によれば、二〇〇〇年代初頭まで、毎年一千~一千三百人で推移していた同学会の新規加入者は、近年は八百~一千人程度で推移している。外科志望者が減った理由は後述のように多岐にわたる。外科医の不在は、人の命を救う医療にとって重大かつ深刻な影響をもたらす。同学会は「若手外科医の確保は最も重要な課題と言っても過言ではない」と警鐘を鳴らす。しかし、この危機感とはうらはらに動きが鈍いのが現状だ。
 外科はなぜ、敬遠されるのか。同学会は①専門医資格を取得するのに時間がかかり生涯労働期間が短い②勤務時間が長い(ワークライフバランスが十分に考慮されていない)③給与が勤務量に見合っていない④医療訴訟のリスクが高い⑤女性医師への配慮が乏しい―これらを理由に挙げる。
 だが、こうした各論以前に構造的な問題がある。人口減少が進む我が国で、いつか医師は余る。少子化の影響を受けやすい産科や小児科では、既に、その傾向が顕著だ。ついで影響が出るとすれば外科だ。個人差があるが外科手術の対象は七十代までだろう。二〇年度の厚生労働省の「患者調査」によれば、手・・・