江戸時代末期、尊王攘夷の思想が下級武士の間に広まり、一八六一年一月十四日（万延元年十二月四日）、初代駐日米国公使、タウンゼント・ハリスの通弁官（通訳）、ヘンリー・ヒュースケンが、芝の薪河岸（現・港区東麻布）の中の橋付近で、八人の薩摩藩士に殺害される事件が起きた。
　一方、米国では、同年四月十二日、サウスカロライナ州チャールストンの港に位置するサムター要塞に対し、南部諸州からなるアメリカ連合国の軍隊（南軍）が攻撃を開始し、四年間にわたる南北戦争の火蓋が切られた。
　米英戦争（一八一二年）以降、奴隷制度を認めない合衆国北部では、木綿工業や鉄鋼業が発達して産業革命が起きた。これに対し、黒人奴隷を使った大規模な綿花栽培に依存するサウスカロライナ州、ミシシッピ州、フロリダ州、アラバマ州など南部十一州が合衆国からの脱退を宣言した。南部諸州が特に不満を抱いていたのは、米国産綿花の国際的競争力を損なう関税や、奴隷制度に利益をもたらさない自営農業の奨励といった政策だった。
　戦争開始と同時に、この年三月に第十六代合衆国大統領に就任したばかりのエイブラハム・リンカーンと、財・・・