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経済

《クローズ・アップ》大矢 光雄(東レ次期社長)

「不祥事の戦犯」老害・日覺の傀儡

2023年5月号

 東レは日覺昭廣社長(七十四歳)が会長になり、大矢光雄副社長(六十六歳)が社長に昇格する。
 東レの内部事情に詳しくない人でもこのニュースを耳にすれば、東レが深刻な病に侵されていることを知るだろう。十三年間社長に居座った人物が代表権のある会長となり、東証プライム上場企業の大半で会長職すら辞すべき年齢の人物が新社長に座る。「若返り」「経営の刷新」とはまったく無縁の、時代逆行の人事であることは歴然としているからだ。
 東レは、昨年一月、樹脂製品の難燃性を保証する米国の認証を三十年間以上、偽装していた不正が明らかになった。三菱電機、日野自動車はじめ日本企業の品質不正は枚挙にいとまがないが、火災など直接人命にかかわる品質での不正はメーカーとしての存立にかかわる。同社は二〇一七年にも子会社でデータ不正がみつかっており、日覺社長自身が「全社の総点検とコンプライアンス強化」を掲げ、出直したはずだったが、長年の不正にはだんまりを決め込んで、トップの座に居座った。
「六三・六七%」。昨年六月の株主総会における日覺社長の取締役選任案への株主の賛成比率である。上場企業のトップと・・・