「テロの連鎖」は誰のせいなのか
《政界スキャン》
2023年5月号
日本は「テロの季節」に入った。なのに昨年の安倍晋三元首相殺害に比べ、岸田文雄首相が爆発物で襲われた事件は、軽傷者二人ですんだためか、メディアや世論の受けた衝撃度が不気味に鈍い。
容疑者は母親と仲良しのおとなしい「ガーデニング青年」。現場はのどかな田舎の漁港で、とっさに男をふん捕まえた「漁師のおっちゃん」は、小学生の時に柔道を習っていましたと照れる気のいい朗らか系。狙われた岸田首相も命拾いして青ざめた様子さえなく、「リスクなんてどこでもあるだろ。いつも通りでいい」と能天気そのもの。どの登場人物もそろって緊張感が欠落した顔ぶれなので、世の中もテレビの「ドッキリ番組」でも見せられた視聴者気分で、なーんだ、あまり脅かすなよ、とのんびりしている。
だが、爆発物は確実に殺傷能力のある武器だった。見つかっただけでも金属製のパイプやフタが、数十メートルの範囲にコンテナの金属壁も突き破る威力で飛び散っていた。死者が出なかったのは全くの偶然にすぎない。安倍氏への銃撃も、一発目は外れ、二発目の当たり所がたまたま不運にも致命傷となった。不合理な死の多くは運命のいたずらである。
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容疑者は母親と仲良しのおとなしい「ガーデニング青年」。現場はのどかな田舎の漁港で、とっさに男をふん捕まえた「漁師のおっちゃん」は、小学生の時に柔道を習っていましたと照れる気のいい朗らか系。狙われた岸田首相も命拾いして青ざめた様子さえなく、「リスクなんてどこでもあるだろ。いつも通りでいい」と能天気そのもの。どの登場人物もそろって緊張感が欠落した顔ぶれなので、世の中もテレビの「ドッキリ番組」でも見せられた視聴者気分で、なーんだ、あまり脅かすなよ、とのんびりしている。
だが、爆発物は確実に殺傷能力のある武器だった。見つかっただけでも金属製のパイプやフタが、数十メートルの範囲にコンテナの金属壁も突き破る威力で飛び散っていた。死者が出なかったのは全くの偶然にすぎない。安倍氏への銃撃も、一発目は外れ、二発目の当たり所がたまたま不運にも致命傷となった。不合理な死の多くは運命のいたずらである。
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