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連載

現代史の言霊  第59話

三月の侵攻 - イラク戦争開戦(二〇〇三年)
伊熊 幹雄

2023年3月号

《米国が大きくて強いことを示してやる》
ドナルド・ラムズフェルド(元米国防長官)

 今年三月は米軍主導の有志連合がイラクに侵攻してから二十年になる。その経緯を簡単に振り返ると、今の世界が見えてくる。
 今日「イラク戦争」と呼ばれる戦争は、主要戦闘自体は短期間で終わった。侵攻は現地時間の三月二十日未明。米国時間では十九日の夜だった。戦闘部隊は主力の米国が約十万人、英国が約三万人で、イラク国軍は三十万人超だった。
 だが、米英軍の圧倒的な空軍力、陸軍力に、イラク軍はまもなく潰走状態になった。有志連合軍は、開戦から二週間余りで南部の大都市バスラを制圧した。四月の初めには首都バグダッドに迫り、一気に包囲戦に着手した。四月九日には、バグダッド中心部に米軍部隊が入り、首都が陥落した。
 米軍の最高司令官であるジョージ・W・ブッシュ大統領(当時、以下同)は五月一日、カリフォルニア州サンディエゴ沖に停泊した、空母「エイブラハム・リンカーン」艦上で「イラクにおける主要戦闘は終結した」と宣言し、「任務完了演説」・・・