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WORLD

《 世界のキーパーソン》ボリス・ピストリウス(ドイツ国防相)

戦車供与を逡巡した「元親露派」

2023年2月号

 窮地に追い込まれた時、人は誰を頼るだろうか。ドイツのオラフ・ショルツ首相は、自分と似たような人物を頼るようだ。押し出しがよく、言語も明瞭だが、行動は慎重。ウクライナの戦争で、ドイツの貢献が国際社会から厳しい視線を浴びていた時、ニーダーザクセン州内相だったピストリウスは、ベルリンに呼び出された。
 前任者(本欄二〇二二年四月号)は、厳しい内外の批判の中で辞任した。ロシアがウクライナに侵攻した後、連邦軍機で息子と国内旅行をした。ウクライナ支援にも終始及び腰だった。
 ピストリウスは就任早々から、「ウクライナに戦車を送れ」という内外の要求にさらされた。彼自身は何も考えていなかった。記者団から方針を問われると、「まず連邦軍の配備状況を見ないと」と答えて、失笑を買った。野党は「そんなものは国防省が、とっくにまとめている」と手厳しかった。
 ドイツが逡巡したのは、レオパルト2の性能が良すぎるからだ。「欧州最強」との定評があり、世界各国に二千両もある。ロシアは早い時期から「レオパルト2をウクライナに供与すれば、我が国への敵対行動と見なす」とドイツに警告していた。{br・・・